クラウドソーシング大手3社の公式ページ上で、1ページのコーディングの相場は3,000円〜30,000円と10倍の開きがありました(2026年9月に各社の公式ページで確認)。同じ表に並んでいる納期の目安は、HTML・CSSコーディング1ページで7日前後。いまの道具ならデザインが揃っていれば10ページを数時間で組めるので、その金額は去年の作り方を前提にした数字です。
ここから先は、その相場がどこに書いてあるかと、私が相場の2〜3倍で受注している理由です。
「ホームページ制作、10ページくらいで20万円が相場です」
この手の見積もりが、私のところにはほぼ毎日届きます。Web制作の営業メールが来るからです。金額としては、たしかに相場どおりです。おかしなことは何も書いていません。
ただ、この記事で書きたいのはここです。その「相場」、誰が、いつの作り方を前提に出した数字なのか。
調べたら、はっきり書いてありました。公式に、金額と一緒に。
まず、相場は公式ページに書いてある
クラウドソーシング大手3社の公式ページに、発注の目安金額が出ています。1ページのコーディングでいくらか、並べたのが下の表です。
| 出どころ(公式ページ) | 1ページのコーディング |
|---|---|
| ココナラ|出品のよくある価格帯 | 3,000〜20,000円 |
| ランサーズ|代行会社の下層ページ | 5,000〜10,000円 |
| ランサーズ|フリーランスのトップページ | 25,000円〜 |
| クラウドワークス|HTML・CSSコーディング | 30,000円〜 |
見てのとおりです。同じ「1ページのコーディング」で、3,000円から30,000円まで10倍の開きがあります。
この時点で一つ言えます。「相場」という一つの数字は、もともと存在しません。存在するのは、出す側が都合よく選べる幅です。だから「相場です」と言われたとき、その人がこの幅のどこを、なぜ選んだのかを聞かないと意味がありません。
そして、その表には納期もいっしょに書いてある
ここが本題です。金額だけを見て終わる人が多いのですが、同じ表に納期の目安も並んでいます。
| 依頼の内容 | 納期の目安 |
|---|---|
| ホームページ制作 | 30日前後 |
| LP制作・デザイン | 20日前後 |
| Webデザイン(1ページ) | 15日前後 |
| WordPress制作 | 14日前後 |
| HTML・CSSコーディング(1ページ) | 7日前後 |
赤いところを見てください。HTML・CSSコーディングは1ページ30,000円〜、納期の目安が7日前後。
ここで一度、電卓を出します。1ページ30,000円を10ページぶん積み上げると300,000円。納期をそのまま足すと70日です。ところが同じ表の「ホームページ制作」は200,000円〜で30日前後。
| 10ページのサイトを頼むと | 金額 | 期間 |
|---|---|---|
| ページ単価を10ページぶん積み上げる | 300,000円 | 70日 |
| 「ホームページ制作」の行をそのまま使う | 200,000円〜 | 30日前後 |
つまり、よく聞く「10ページで20万円、1ヶ月」という見積もりは、ページ単価の掛け算から出た数字ではありません。表の「ホームページ制作」の行を、そのまま持ってきた数字です。同じ表の中ですら、積み上げと合っていません。
金額の食い違いのほうは、まとめ買いの割引だと思えば筋は通ります。問題は、どちらの行にも「1ページに1週間」という時間感覚が置かれていることです。
念のため書いておくと、納期の目安は作業時間そのものではありません。やりとりや確認の往復も入った、依頼から納品までの日数です。それでも、1ページのコーディングを頼んだら1週間、10ページのサイトなら1ヶ月という感覚が、公式に目安として置かれている。金額は、その時間感覚の上に乗っています。
だから相場の金額は、「1ページに1週間かける前提」の値段です。金額と納期はセットで、片方だけ借りることはできません。7日という前提が崩れたら、金額の根拠も一緒に崩れます。
1年前なら、その相場で合っていた
誤解のないように書いておきます。この相場が、ずっと間違っていたわけではありません。去年までなら、合っていました。
私自身、以前は同じ規模のサイト(トップ+下層15ページ)に1〜2週間かけていました。しかもそれは「デザインを作るだけ」でです。コーディングはそのあとから始まります。1ページに半日から1日。10ページで2週間。相場表の「1ページ7日」は、そこに依頼のやりとりと確認の往復を足したリードタイムだと考えれば、不自然な数字ではありませんでした。
変わったのは、この1年です。
| 去年まで | いま(2026年9月) | |
|---|---|---|
| デザイン | Figmaでカンプを作ってから実装 | ワイヤーからコードで直接作る/Figmaがあれば連携で流し込む |
| 1ページあたり | デザインに半日〜1日。コーディングはそのあと | 数分(デザインと実装が同時) |
| 15ページ規模の初稿まで | デザインだけで1〜2週間、コーディングはそこから | 1〜5日(コーディング部分は30分) |
| 確認のしかた | デザインを確認 → それから実装 | 実装済みのものを確認 → OKならそのまま公開 |
| 1ページ3万円の根拠 | 成り立っている | 消えている |
1年です。10年ではありません。時代が変わる速さのほうが、相場が更新される速さより上になりました。
だから、去年のカリキュラムで学んで、去年の相場表を見て見積もりを出すと、それだけで1年ぶん遅れた提案になります。本人は最新のつもりでいます。ここがいちばん怖いところです。
実際に届く営業メールも、その前提のまま止まっている
私のところに届いた営業メールから、実績として書かれていた部分をそのまま引用します。差出人が特定できる情報は伏せています。
・多言語対応コーポレートサイト(WordPress/全16P/1ヶ月半・保守運用中)
→ 多言語追加にも対応しやすい構成で納品。大きな手戻りや仕様変更なく進行。・子ども英会話教室の公式サイト(WordPress/全6P/3週間・保守運用中)
→ 公開後も運用しやすく、拡張しやすい構成で納品。
16ページに1ヶ月半、6ページに3週間。これを「制作実績」として、いちばん上に書いて送ってきています。
同じ人の料金表も引用します。
・LPコーディング ¥32,000〜(10,000px未満)
・下層ページ ¥10,000〜
・WordPressオリジナルテーマ実装 ¥16,000〜
修正は3回まで無料で承ります。
金額はきれいに相場のなかに収まっています。相場を見て、相場どおりに出している。納期のほうは、16ページに1ヶ月半なら1ページ2.8日、6ページに3週間なら3.5日。相場表の7日よりは速い。それでも「1ページに数日」という同じ時間感覚の中にいます。何も間違っていません。教わったとおりです。
問題は、その相場表の前提が、もう現実と合っていないことです。
いま実際にかかっている時間
進行中の2件で、実際にかかった時間を書きます。
クリニックのサイト|デザイン支給
Figmaが揃っていたので、コーディングは全ページで1時間以内。寝る前に指示を出して、起きたら終わっていた。スマホ表示も自動。WordPress化と目視修正を足した合計。
動物病院のサイト|デザインなし・10数ページ
初回打ち合わせ60分+ワイヤーフレーム作成 約1時間+デザインを決めて実装しながら確認 約3時間。打ち合わせから提出まで。いまはピンポイント修正だけ。
相場表が前提にしている
1ページあたり/公式の相場ページの納期目安
いま実際にかかっている
1ページあたり/2026年9月・進行中の案件の実測
1ページあたりに直すと数分です。Figmaが支給される案件なら、15ページ規模でもコーディングは30分ほどで終わります。相場表は7日。こちらは数分。値段の根拠になっていた前提のほうが、先に入れ替わりました。数字だけが、置き去りになっています。
だから「10ページを5万円で」と言われても、私は受けるかもしれない
正直に書きます。10ページを5万円でお願いしたい、と言われても、私は受けるかもしれません。数時間で終わるからです。時給に直せば、断る理由がありません。
これが、いまコーディング単価に起きていることです。工数を売っている人の値段は、工数が10分の1になった瞬間に、10分の1まで落ちる圧力がかかります。相場が守ってくれると思っているなら、それは間違いです。相場のほうが先に落ちます。
それでも私は、相場の2〜3倍で受注しています
矛盾しているように見えると思います。5万円でも受けるかもしれない人間が、実際の受注では相場の2〜3倍をいただいている。
矛盾していません。値段は工数では決まらないからです。
クライアントが払っているのは、私が画面の前に座っていた時間ではありません。
- 何を作るべきかを決めたこと
- 公開後に運用で困らない作りにしたこと
- 動かなかったときに、責任を持つ相手がいること
- 成果が出なければ、次の手を出せること
このどれも、コーディングにかかる時間とは関係がありません。時間が10分の1になっても、この4つは減らない。だから値段も下がりません。むしろ、空いた時間をこの4つに使えるようになったぶん、中身は前より良くなっています。
これは慈善事業ではありません。利益を出すためにやっているので、当たり前の話です。
「プログラマーは稼げる」には、賞味期限がある
ここからは、はっきり書きます。
プログラマーやコーダーが稼げると言われたのは、手が足りなかったからです。作れる人が少なくて、作るのに時間がかかったから、時間に値段がついた。それだけです。
手が足りている領域は、もう稼げません。そしてコーディングは、いちばん先に手が足りるようになった領域です。デザインが揃っていれば、全ページを数時間で組めます。
なのに「プログラミングを学べば稼げる」という言葉だけが、当時のまま残っています。学ぶこと自体は良いことです。ただ、稼げる理由のほうが入れ替わったことに気づかないと、去年の武器を持って今年の市場に立つことになります。
知識とスキルがないまま「相場です」と言うのが、いちばん危ない
相場を根拠に見積もりを出すと、金額だけを借りたつもりで、その相場が前提にしている作業時間まで一緒に引き受けることになります。
「1ページ3万円が相場なので」と言った瞬間、受け取った側にはこう伝わります。
この人は、1ページに1週間みておく前提で仕事をしている
もっと言うと、「これくらい作業がかかるので」という説明は、金額の根拠ではなく、スキルの申告になっています。かかる時間は、その人の道具と手順で決まるからです。同じ作業に3週間かかると自分から言うのは、3週間かかる手順しか持っていないと言うのと同じです。
本人にその自覚がないのが、いちばん怖いところです。強みとして書いた一文が、そのまま弱点の申告になっている。
そして、これは本人だけの問題でもありません。「相場はこれです」「納期はこれくらいです」と教えている側が、去年のカリキュラムのまま止まっています。教わったとおりに真面目に書いた人ほど、古い前提を正確に再現してしまう。
発注する側が見るべきなのは、金額ではなく根拠
安ければ得、という話ではありません。5万円で受ける人が、同じものを出せるとは限らない。むしろ「安くします」と「速いです」しか言えない相手は、それ以外に言うことがない、という意味でもあります。
見積もりをもらったら、金額の横にある根拠を見てください。
| 説明のしかた | 言っていること | この先どうなるか |
|---|---|---|
| 相場で説明する | 「1ページ3万円が相場なので」 | 相場が落ちたら、一緒に落ちる |
| 時間で説明する | 「10ページで5日かかるので15万円です」 | 道具が変わると根拠ごと崩れる |
| 成果で説明する | 「この構成にすると問い合わせが増えます。公開後3ヶ月は数字を見て直します。だから20万円です」 | 道具が変わっても崩れない |
同じ20万円でも、中身は別物です。
以前、フリーランスの「相場」は誰の基準か?現実を見ようという記事を書きました。相場はたいてい、実績のある人が成果に基づいて出している金額で、実績のない人が同じ金額を言っても通らない、という話です。
いまは、そこにもう一つ加わりました。その相場は、何年の作り方を前提にした金額なのか。
まとめ
- コーディング1ページの「相場」は、公式ページ上で3,000円〜30,000円と10倍の開きがある。一つの数字としての相場は存在しない
- その相場表には納期も書いてあり、1ページのコーディングに7日前後が前提になっている
- いまは、デザインが揃っていれば全ページのコーディングが1時間以内。WordPress化と修正まで入れて1〜2時間。1ページあたり数分
- だから工数や相場で値付けしている人の単価は、これから下がる
- それでも相場の2〜3倍で受注できるのは、時間ではなく判断と責任を売っているから
- 「これくらい作業がかかるので」は、金額の根拠ではなくスキルの申告になっている
相場は、去年の数字です。そして相場は、誰も更新してくれません。
更新するのは相場ではなく、自分の手のほうです。いま自分が3週間かけている作業を、いまの道具で作った人が何分で出すのか。一度、手を動かして比べてみてください。話はそこからです。
※ 金額と納期の出どころ:クラウドワークス「発注相場」ページ、ランサーズ「発注者向けノウハウ」、ココナラ「HTML・CSSコーディング」カテゴリページ(いずれも2026年9月に確認)。作業時間は2026年9月時点の自分の案件の実測。
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