PR案件の候補者リストを受け取りました。135人分のインフルエンサーが並んでいて、それぞれにフォロワー数が書いてあります。46万人の人もいれば、1,000人の人もいる。多い順に選べばよさそうに見えます。
ただ、私はその並びをそのまま信じる気になれませんでした。135人全員のInstagramを1件ずつ開いて、フォロー数と発信言語と今のフォロワー数を手で確かめてみたんです。
結果を先に言うと、順番がひっくり返りました。46万フォロワーの人より、7,600人の人のほうが多くの人に届いていました。
※ この記事に出てくるアカウント名・URLはすべてランダムな英数字に置き換えています。数字も特定を避けるために丸めていますが、大小関係と桁は元のままです。案件名・サービス名も伏せています。
まず、何を調べたのか
受け取ったリストには、ちゃんとした欄が用意されていました。フォロワーの男女比、年代の内訳、居住している都道府県、直近60日のリーチ数。ここが埋まっていれば、誰を選ぶべきかはすぐ決まります。
135人全員、空欄でした。
ここは、私が見られなかっただけです。この欄はプラットフォーム側の有料オプションを契約すると開く情報で、インサイトを連携している人もいるはずです。契約していない私の画面では、まとめて空欄に見えている。
つまり選択肢は、普通なら2つです。オプション料金を払って中身を見せてもらうか、払わずに勘で選ぶか。
私は3つ目を選びました。外から見える情報だけを集めて、AIに整理させる。結論から言うと、これで足りました。
私の手元にあったのは、フォロワー数と、EGR(エンゲージメント率=投稿に対する反応の割合)と、そのプラットフォームでの採用回数だけ。ここに、誰でも見られる情報を足しにいきました。全員のプロフィールを開いて、拾ったのはこの3つです。
- 今のフォロワー数(リストの数字は少し古いことがある)
- フォロー数(この人が誰を何人フォローしているか)
- プロフィールと投稿が何語で書かれているか
やったことは単純です。プロフィールのURLを135件ぶんClaudeに渡して、1件ずつ開いて上の3つを書き出させる。あとは元のリストのEGRと突き合わせて、判定の条件を決めて仕分けるだけです。手でやれば1人2〜3分、135人で6〜7時間かかる作業ですが、AIに投げれば待っているだけで終わります。
かかった費用はゼロです。有料オプションで開くのは「フォロワーの内訳」ですが、私が知りたかったのは「その数字が本物かどうか」でした。後者は、外から見える数字だけで判断がつきます。
135人中123人分が取れました。残る12人はInstagram側に弾かれて、どうやっても表示できませんでした。以下の数字はその123人の話です。
フォロワーが多い人ほど、誰も見ていなかった

まず、上位の人たちを並べてみます。「推定接触数」はフォロワー数×EGRで、その投稿に実際に反応する人がだいたい何人いるか、という数字です。右端のバーの長さが、実際に届く人数です。バーの色は反応率で、赤が0.5%未満、緑が2%以上を表しています。
| アカウント | フォロワー | フォロー | 反応率 | 推定接触数 |
|---|---|---|---|---|
| @sh711x4 | 約46万 | 約240 | 0.24% | 約1,100 |
| @bep882j | 約15万 | 約600 | 0.25% | 約410 |
| @4ij77b6 | 約13万 | 約180 | 0.28% | 約370 |
| @ddm606w | 約84,000 | 約980 | 0.17% | 約140 |
| @t6a43zx | 約58,000 | 約130 | 0.09% | 約50 |
| @4ce81wx | 約20,000 | 約480 | 0.02% | 約0 |
次に、フォロワーが1万人前後の人たちです。
| アカウント | フォロワー | フォロー | 反応率 | 推定接触数 |
|---|---|---|---|---|
| @ipf44r2 | 約7,600 | 約3,100 | 13.51% | 約1,100 |
| @ir3609f | 約9,000 | 約8,600 | 7.60% | 約680 |
| @94f42q5 | 約13,000 | 約6,400 | 4.99% | 約650 |
| @jfm29qq | 約21,000 | 約310 | 4.13% | 約540 |
| @53x63ny | 約5,000 | 約5,400 | 7.50% | 約380 |
46万フォロワーの@sh711x4と、7,600フォロワーの@ipf44r2が、同じ約1,100人です。フォロワー数は60倍違うのに、届く人数は変わりません。
数字だけだと実感が湧かないので、この2つを球にしてみました。1つの粒が20人、光っている粒が実際に反応する人です。ドラッグで回せます。
左の球は大きい。粒の数が60倍、直径にすると約3.9倍あります。ところが「光っている粒だけにする」を押すと、2つはほとんど同じ大きさになります。46万人のほうが約55粒、7,600人のほうが約51粒。見栄えの差は、届く人数の差ではありませんでした。
2万フォロワーの@4ce81wxにいたっては、反応率0.02%です。5,000人に1人しか反応していない計算になります。商品を送っても、それを見る人が実質いない。
数字として一番わかりやすかったのは、判定を分けたあとの中央値でした。私は135人を「良好」「普通」「要注意」「質に難あり」「水増し濃厚」の5段階に分けたのですが、
● 良好と判定した 33人
フォロワーは少ないが、投稿を見ている人がちゃんといる。
✕ 質に難ありと判定した 32人
フォロワーは2倍以上多いのに、反応は16分の1しかない。
質が悪いと判定したグループのほうが、フォロワーが2倍以上多い。フォロワー数で選ぶというのは、この2つのグループを逆に取るということです。
反応率の相場を知らないと、何も判断できない
ここで前提になるのが、反応率の相場です。日本のマイクロインフルエンサー(フォロワー数千〜数万)の場合、フィード投稿で2〜4%あたりが健全な水準とされています。1万フォロワーなら200〜400人が反応する、ということです。
この135人の実態はというと、フィードとリールの良いほうを取っても中央値1.11%。そしてフォロワー3,000人以上で反応率0.5%未満の人が35人いました。4人に1人以上です。
0.5%を切っているというのは、相場の下限のさらに4分の1です。ここまで落ちると、もう「たまたま調子が悪い」では説明がつきません。フォロワーの中身が、数字と一致していない。
水増しには2つの型があり、区別できる
反応が薄いアカウントを、フォロー数と並べて見たときに、きれいに2つの型に分かれました。
型1:相互フォロー型
フォロー数がフォロワー数とほぼ同じ、あるいは上回っているタイプです。「フォローしたので返してください」で数を積んだ形。
| アカウント | フォロワー | フォロー | FF比 | 反応率 |
|---|---|---|---|---|
| @39k95qk | 約12,000 | 約6,300 | 1.8 | 0.42% |
| @maj32j8 | 約10,000 | 約8,600 | 1.2 | 0.11% |
| @ia8179t | 約10,000 | 約7,100 | 1.4 | 0.11% |
| @dqc81iu | 約7,600 | 約6,600 | 1.1 | 0.48% |
| @e3285ez | 約6,300 | 約5,700 | 1.1 | 0.00% |
| @kke369q | 約6,000 | 約8,800 | 0.7 | 0.49% |
FF比というのは、フォロワー数÷フォロー数です。1.0なら、フォローした数とフォロワーの数が同じ。この積み方をすると相互フォロー目当てのアカウントばかりが集まるので、数は増えても投稿は見られません。@e3285ezは反応率0.00%、つまり直近の投稿にほぼ誰も反応していない状態です。
型2:買った疑いのある型
逆に、フォロー数が極端に少ないのに反応がないタイプです。相互フォローで積んだわけではないのに、誰も見ていない。
| アカウント | フォロワー | フォロー | FF比 | 反応率 |
|---|---|---|---|---|
| @sh711x4 | 約46万 | 約240 | 1,929 | 0.24% |
| @bep882j | 約15万 | 約600 | 254 | 0.25% |
| @4ij77b6 | 約13万 | 約180 | 719 | 0.28% |
| @ddm606w | 約84,000 | 約980 | 86 | 0.17% |
| @s4i17y7 | 約59,000 | 約540 | 108 | 0.10% |
| @t6a43zx | 約58,000 | 約130 | 449 | 0.09% |
フォロー130人で5.8万フォロワーというのは、本来なら「発信力があって一方的に集まっている」という形です。それなのに反応率が0.09%。矛盾しています。
ここで大事な注意があります。FF比が低いこと自体は、悪いことではありません。私が「良好」と判定した33人のFF比の中央値も1.9でした。フォロー数が多いのは、単に交流しているだけかもしれない。
判断できるのは、FF比と反応率を掛け合わせたときです。フォローが多くて反応も薄いなら相互フォロー稼ぎ、フォローが少ないのに反応が薄いなら購入の疑い。どちらか片方だけでは何もわかりません。
「外国人フォロワー」は、思ったほど問題ではなかった
私がこの調査を始めたきっかけは、「フォロワーが外国人だらけのアカウントがあるらしい」という話でした。海外の業者から買うと、そうなると。
実際に調べると、英語で発信しているのは135人中2人だけでした。1人は在日外国人の方で、母国語圏に向けて日本の情報を発信しているアカウント。もう1人も外国人向けの日本紹介です。
| アカウント | フォロワー | フォロー | 反応率 |
|---|---|---|---|
| @6x664in | 約44,000 | 約2,100 | 0.61% |
| @8ed99v6 | 約3,300 | 約4,600 | 1.50% |
この2人は、日本国内向けの商材には向きません。ただ、それは「質が悪い」のではなく、届く先が違うだけです。海外向けの商材なら、むしろ第一候補になります。
私が身構えていた「海外の偽フォロワー」より、数として圧倒的に多かったのは、日本人同士の相互フォローで積み上がった数字のほうでした。悪意があるわけでもなく、いつのまにかそうなってしまう。そちらのほうが、見つけにくいぶん厄介だと思います。
では、質の良いアカウントとは?

123人を見終わったあとに、私の中で残った見分け方は5つでした。上から順に効きます。
1. 反応率が2%以上あるか(最重要)
これだけで7割は判別できます。フォロワー数がいくつであっても、2%を超えていればフォロワーは実在して、投稿を見ています。1%台なら及第点、0.5%を切ったらフォロワー数を信じてはいけません。
反応率が出ていない場合は、直近の投稿10本の「いいね数」を目で数えて、フォロワー数で割れば自分で計算できます。手間は5分です。
2. フォロワー数ではなく「反応する人数」で見る
フォロワー数×反応率で、届く人数の見当がつきます。46万×0.24%=1,100人。7,600×13.51%=1,027人。この形にすると、比べるべきものが同じ単位に揃います。
予算を決めるときも、フォロワー1万人あたりいくら、ではなく、届く1人あたりいくら、で考えたほうが実態に合います。
3. FF比と反応率を、必ずセットで見る
さきほど書いたとおりです。
- フォロー多い × 反応薄い → 相互フォローで積んだ数字
- フォロー少ない × 反応薄い → 買った疑い
- フォロー多い × 反応あり → ちゃんと交流している。問題なし
- フォロー少ない × 反応あり → 一番強い形
4. 案件を受けすぎていないか
135人の採用回数の中央値は49回で、最多は733回でした。数百回のアカウントは、フィードがPR投稿で埋まっています。フォロワーもそれに慣れていて、「また案件か」で流されます。
実績が多い=信頼できる、とは限りません。プロフィールを開いて、直近10投稿のうち何本がPRかを数えるのが早いです。
5. 発信ジャンルが商材と一致しているか
これは当たり前のようで、リストを眺めていると忘れます。反応率が高くても、ジャンルが違えばその反応は商材に向かいません。食品なら普段から食べ物を投稿している人、という単純な確認です。
逆に、質が高いと思われるアカウントの作り方
ここまでは選ぶ側の話です。選ばれる側から見ると、同じ話が裏返しになります。
今回の135人を見ていて強く思ったのは、フォロワーを増やす努力の多くが、逆方向に効いているということでした。数を増やすほど反応率が下がって、選考では落ちる。
1. 数を追うのをやめる
私が「良好」と判定した33人のフォロワー中央値は4,710人です。1万人もいりません。5,000人で反応率3%のほうが、5万人で反応率0.2%より強い。前者は150人に届き、後者は100人です。
相互フォローで1万人にしても、案件の選考では落ちます。数字は残りますが、選ぶ側が見ているのはその数字ではありません。
2. 投稿の本数より、1本あたりの反応
反応率は分母がフォロワー、分子が反応です。数を打って薄い投稿を増やすと、分子だけ薄まって指標が悪化します。
反応率の分子には、いいねだけでなくコメントや保存も入ります。今回のリストにはコメント数の欄もあったのですが、こちらも全員空欄で中身は見られませんでした。ただ、分子を増やす方向が「本数を打つ」ではなく「1本にちゃんと反応してもらう」であることは、計算式のうえで確かです。投稿の最後に問いを1つ置く、くらいのことから変わります。
3. ジャンルを1つに絞る
リストには「ファッション、ヘアケア、メイク、スキンケア、ネイル、キッズ、ペット、ゲーム」と8ジャンル書いている人がいました。選ぶ側からすると、これは「どれも専門ではない」と読めます。
逆に「福岡のグルメ歴20年」と1行だけ書いている人は、福岡の飲食案件では一番に目に入ります。絞ると案件の数は減りますが、指名される確率は上がります。
4. PR投稿の比率を自分で管理する
案件を受けるほど実績は増えますが、フィードがPRで埋まると反応率が落ちて、次の選考で不利になります。受けすぎると先細りする構造です。
目安として、直近10投稿のうちPRは3本まで。残り7本で普段の反応を作っておくと、指標が保てます。
5. 自分の数字を、自分から出す
これが一番大きいと思います。今回、私の画面では135人全員のデモグラ欄が空欄だったので、外から推測するしかありませんでした。推測は、疑いの方向に働きます。
逆に言えば、インサイトのスクリーンショット(フォロワーの男女比・年代・地域・直近のリーチ数)を自分から添えるだけで、推測されずに済む。数字が普通でも、出している人のほうが強いです。私が選ぶ側なら、間違いなくそちらを選びます。
で、インフルエンサーマーケティングは効果的なのか
135人を見終わって、私の答えはこうです。
フォロワー数で選ぶ限り、効果はありません。むしろ質の悪いグループのほうがフォロワーが多かったので、素直に上から選ぶと、意図的に外れを引くのと同じことになります。
ただ、反応率で選び直すと話は変わります。5,000人のアカウントが150人に確実に届く。その150人は、その人が普段から食べ物の写真を見に来ている人たちです。46万人のアカウントの1,100人より、質としては濃い。
効果がないのは手法ではなく、選び方だったというのが、今回の結論です。そして選び方を直すのに、有料オプションは要りませんでした。プロフィールを開いてフォロー数を見る。いいねを数えてフォロワー数で割る。それだけで候補の4分の1が落ちました。
この作業はAIが一番得意な形をしています。判断が難しいのではなく、単純な確認を135回くり返すのが面倒なだけだからです。お金を払って内訳を開いてもらう前に、まず自分で調べてみることをおすすめします。そのうえで足りなければ払えばいい。順番が逆になっている気がします。
最後にひとつ、わからなかったことも書いておきます。私が見たのは反応率とフォロー数だけで、フォロワーの国籍そのものを見たわけではありません。判定はあくまで外からの推測です。そこまで確実に知りたければ、有料オプションを契約するか、本人にインサイトを見せてもらうしかありません。
ただ、「このフォロワー数を信じていいのか」を判断するだけなら、そこまでは要りませんでした。今回いちばん言いたいのは、そこです。
ケートエーアイの記事をGoogleで見つけやすくする
Googleの「優先する情報源」に登録すると、検索結果の上位ニュースやAIによる概要でケートエーアイの記事が出やすくなります。お使いのGoogleアカウントに保存され、いつでも解除できます。


当記事に対してのコメントをご記載くださいませ!